気配をつかまえる
僕が生まれ育った長崎には、「旗揚げ」という遊びがあります。これはいわゆる「凧」ですが、風になびく船旗に由来して「旗」と呼ばれています。「旗」は、交流の深かったオランダの国旗を模して、青・赤・白で構成された抽象的な図象になっています。「旗」を通して、風だけではなく、文化の一端が目に見えます。
この「旗」のように、建築を通して、見えないもの、くらしの中に馴染んでいて普段は気づきにくいものを掬い上げられないだろうかと考えています。子どもが「なぜこうなっているのだろう?」と気になってしまうようなもの、小さな違和感のようなものを探すところから設計が始まります。クライアントの要望を聞き、敷地やその周辺を観察し、まちの歴史を調べるあいだに、どこかで自分の身体が面白いと感じるものをつかまえる瞬間があります。
これは「コンテクスト」と言うよりも、「気配」の方が近い気がしています。一度見つけて気になり始めると登場人物のように感じられて、頭の中で、あるいは手を動かす中で、あるいは模型をつくる中でそれらが空間を削り出していく。この「気配」を建築にしたいのです。
Text | YU Momoeda