佐賀県鳥栖市、JR 鳥栖駅から西に歩いて 10 分程の場所に計画した薬局+カフェ。周囲には昔からの区割りが残っており、幅員の小さな道が多く見られる。施主は近くで洋菓子店を営むパティシエと薬剤師の夫婦。薬局は日常的に立ち寄りやすい施設であり、カフェを併設した交流施設として地域に根付かせたいとのことだった。
間口 5.5m、奥行き 32m という細長い敷地のため、周囲の小道のように建築内にも通り抜けを設け、高密な環境の中で良好な光と風を獲得し、視線を通すことを提案した。隣家の空地に合わせて南側に通り抜けをつくることで、中間期には周囲に対しても通風を促す。
そこで、必要諸室が入った片流れの下屋を北側に配置し、「カベヤネ」を南側から覆い被せる断面構成とした。「カベヤネ」は、延焼を防ぐ防火塀の仕様を屋根にまで展開したもので、通り抜けを構成する建具(出入口+高窓)にかかる防火設備の規定を外してコストを下げ、意匠性の高い透明ガラスの使用を可能にした。
道路側に面するカフェと薬局の受付は、北側採光によって1間幅の廊下を安定した光環境にし、開放性の高い空間を作った。また、調剤室より奥側のスタッフエリアでは、通路幅を半間にして居室上部に高窓を配置し、必要な採光、通風、排煙を可能にした。
構造は木造在来工法とし、一部に鉄骨材を用いることで、手前と奥で異なる 2種類の断面形状を合理的に実現した。奥は「カベヤネ」と下屋の木架構を直に接合して安定させ、手前は、鉄骨フレームによってそれらを離して計画している。このレの字型の鉄骨材は高窓のマリオンと間接照明の受けという役割も兼ねている。
竣工後、想像以上に風が抜け、美しい光が落ちる通り抜け空間を施主が見て、絵を飾りたいなどの要望も出てきた。少し広めの動線は客席や展示など、今後の変化に合わせた多様な使い方を想起させる。「カベヤネ」による光に満ちたこの空間が、周辺住民にとって寄り道したくなる新しい居場所になることを期待している。
Site: Saga
Program : Pharmacy&Cafe
Site area: 177.92 ㎡
Building area: 115.93 ㎡
Total area: 112.62 ㎡
Structure: Wood+Steel
Floor: One Story
Architect : Yu Momoeda, Koki Okumura
(YU Momoeda Architects)
Structural Engineer : Kosuke Araki
(XYZ Structure)
Environmental Engineer : Studio Nora
Lighting Plan : IRIS OHYAMA Inc.
Completion : Oct. 2022
Construction : KAMINOHARA Construction Co.,Ltd.
Photo : YASHIRO PHOTO OFFICE